シャントトラブル24時間対応・入院加療OK

バスキュラーアクセスセンター
下田循環器・腎臓クリニックのバスキュラーアクセスセンターは透析導入時の自己血管による内シャント造設(AVF)、人工血管による内シャント造設(AVG)、一時的カテーテル留置、動脈表在化のみならず、既存のシャント狭窄や閉塞等に対するカテーテル血管形成術(VAIVT)、血栓除去術、その組み合わせであるハイブリッド手術、シャント再建術を常時行っています。
また、シャント瘤やシャント感染などあらゆるシャントトラブルにも24時間対応しています。当クリニックに受診されている透析患者のみならず、近隣の透析施設に通っておられる患者様、さらには遠方の患者様も併設する入院施設がありますので、入院加療が可能です。

下田循環器・腎臓クリニックの入院施設 

バスキュラーアクセス(VA)とは?

血液透析を行う場合、1~2日間身体に蓄積された老廃物や毒素を浄化するために、1分間で200mL近い血液流量を脱血する必要があります。この脱血ルートを総称してバスキュラーアクセス(VA)といいます。
しかし、通常の静脈からの脱血では1分間で200mLもの血液を透析装置に送り込む事ができません。動脈からの脱血は流量維持こそ可能ですが、毎回の穿刺で、血管が傷害され、末梢の血流が確保できずに、最悪の場合には手指の壊死が起こってしまいます。このため、VAで最も頻用されている方法がシャント造設です。

シャント手術

シャントとは動脈と静脈を吻合し、静脈の血流量を増やして、血管が拡張し、穿刺しやすい血管に発達させて、脱血し透析を行います。シャントがあれば、VAとしていちいち動脈を穿刺する必要がなく、毎回安全な血液透析が可能になります。 シャントには、内シャントと外シャントの2つがありますが、現在では内シャントが主流になっています。内シャントは、皮下で動脈と静脈を吻合し、透析を行う際に穿刺時に痛みがありますが、感染症を引きおこす危険が軽減されます。また、内側にシャントがある事で、見た目に分かりにくいというメリットがあります。 外シャントを行うことはまずないために、説明はここでは割愛します。

内シャント(自己血管:AVF)

主に手首近く(腕時計をする部位)で動脈と静脈を吻合して作製します。この位置には橈骨動脈と橈側皮静脈が走行しており、その両者を吻合することができます。肘近くで内シャントを作製することも可能です。ただあまり中枢側で作製すると、穿刺する部位が限られてしまい、またシャントが閉塞した時に新たに作ることが困難となります。そのため、内シャントはなるべく手首に近いところで作製するのが良いと考えられています。

自己血管内シャント

血管が太い方では、親指のつけ根にシャントを作製することも可能です。ただ、前腕の血管が細く手首で作製できない場合は、肘で作製することになります。初回のAVFは、穿刺までには通常2週間から1か月程度を要しますので、透析導入予定の2-3か月前には作製しておくことが望ましいとされています。
また、将来透析が必要となりそうな患者さんに対して先行作成することもあります。吻合方法は端側吻合(静脈を結紮切離し、切断した静脈断端を動脈の側面に吻合する)と、側側吻合(静脈の側面と動脈の側面を吻合する)2つの方法があります。当クリニックでは主に前者を採用します。

AVFの利点は、長期開存に優れていることです。中には30年以上、最初のAVFで透析を受けている患者さんもいらっしゃいます。また、作製が比較的容易であり、感染の危険が低いことも大きな利点になります。欠点としては、シャント血流が多くなると、心臓の負担が増えたり、手指が冷たくなったり、瘤ができることです。その一方で、シャント静脈が細くなると、十分な脱血ができなくなります。このような欠点はありますが、以下に述べるAVG、上腕動脈表在化、カテーテル法と比べると、比較的管理が容易であり、なんといっても長期開存が期待できるのがAVFの最大のメリットです。

内シャント(人工血管:AVG)

静脈が細い患者さんでは、自分の血管を用いたシャントの作製が困難となります。そのような場合、腕の深い位置を走行している太い静脈と動脈を人工血管でバイパスする方法があります。バイパスした人工血管は皮膚の浅い位置に埋め込みますので、人工血管を穿刺して透析が行えます。これを人工血管内シャント(AVG)と呼んでいます。現在使用できる人工血管には3種類あます。当クリニックでは2種類の人工血管を選択しております。ePTFE人工血管はテフロンに熱を加えて、伸展加工したもので、しなやかで屈曲しにくく、耐久性が良いものです。ただ、穿刺した孔が自然に塞がらないため、移植後2週間以上経過し、周囲の組織と人工血管が十分癒着してから穿刺しなくてはなりません。また蛋白が漏れやすく浮腫(むこむこと)がおきやすい傾向があります。ポリウレタン製人工血管は3層構造になっていて、自分で針孔を止血できる機能を有しています。そのため、周囲組織との癒着を待たず、浮腫がみられることもなく手術の翌日から穿刺することが可能です。その一方で硬いため吻合が難しい、エコーで人工血管内腔が見えにくい、屈曲し狭窄を起こしやすいなどのデメリットもあります。そこで、当クリニックではコンポジットグラフトといい、両方のメリットを最大限活かせるように、両方の人工血管を吻合して1本の新しいグラフトとして使用します。そうすることで浮腫が減り、作成数日で使用が可能となります。

人工血管内シャント

AVGはAVFと比べて、血栓形成の危険が高く、開存性にやや劣ります。また人工物であるため、感染のリスクが高くなります。そのため、AVFを作製できる患者では、なるべくAVFを作製します。日本ではAVGの患者さんは7%程度ですが、次第にその割合が増えています。

上腕動脈表在化法

肘の少し中枢側で、上腕動脈を皮下に移動させて、そこに穿刺するといったバスキュラーアクセスです。動脈は本来筋肉、筋膜よりも深い位置を走行しています。もちろん動脈に直接針を穿刺すれば、十分な血流を引き出すことが可能ですが、深い位置を走行していますので、穿刺や止血が困難で、反復透析には適していません。そこで、筋肉よりも浅い位置に上腕動脈を表在化するという発想が生まれました。表在化しておけば、穿刺・止血の問題がなくなります。

上腕動脈表在化法

通常、上腕動脈は脱血のみに使用し、皮下の静脈に返血します。この静脈はシャント化されていないため、通常それほど太くありません。さまざまな皮下静脈を探して穿刺しますが、何回か穿刺していると、静脈穿刺が困難となります。そのため、上腕動脈表在化法では、脱血の問題はなくても、しばしば返血の問題で継続不能となります。上腕動脈表在化法の利点は、AVF、AVGと異なり、非生理的血流がないことです。AVFやAVGでは500mL/min以上のシャント血流が流れます。シャント血流量が2000mL/minになる患者さんもいます。そうするとその分心臓が余分に働かなくてはなりません。心機能に余裕がある患者さんでは問題ありませんが、心機能が低下した患者さんでは、このシャント血流が心負荷となって、さまざまな症状を引き起こします。そのため、たとえAVFが作製できても上腕動脈表在化法や後述するカテーテル法が選択されます。

カテーテル法

緊急時VA使用が困難な場合や、VA作成が困難な時には大腿静脈(ふとももの静脈)や内頸静脈(首の静脈)、鎖骨下静脈にカテーテルを挿入・留置して透析を行うことがあります。
カテーテルは人工血管よりも感染のリスクが高く、2-3週間程度しか留置できません。長期にわたってカテーテルで透析を行うことができないため、主に緊急用、もしくは透析導入時に一時的な使用目的で留置します。慢性維持透析患者のバスキュラーアクセスとしては、前述したAVFが優れています。

血管が荒廃し、シャント作成が不可能な患者さんには長期留置型のカテーテルの選択が可能です。カテーテルの途中にカフがついていて、皮下トンネルを作製して埋め込むタイプの透析用カテーテルが使用できるようになりました。

このカテーテルの登場によって、人工血管や動脈表在化法の手術が困難な患者さんのバスキュラーアクセスの選択の範囲が広がりました。皮下トンネルを作製することで、従来のカテーテルと比べて、感染の危険性は減少しましたが、異物が体内と体外を交通しているため、AVFやAVGと比べると感染の危険性は高くなります。
長い間透析を行っていると、血栓など、様々な原因によってシャント血管の狭窄や閉塞がみられることがあります。下記のように作成したシャントをできるだけ長持ちさせるには、トラブルについてよく理解して、日頃からしっかり自己管理をすることが大切です。

シャントトラブルとは?

  • 血栓によって血管の内側が狭窄あるいは閉塞してしまう。
  • 血管が狭窄して、血流の量が低下してしまう。
  • 血管が狭くなって腕全体が腫れたり(静脈高血圧)、手がしもやけ状になってしまう(スティール現象)
  • シャント血管が細菌に感染し、瘤を形成したり、膿がたまってしまい、敗血症など感染が悪化してしまう。

など、さまざまな病態がみられます。

シャント狭窄

シャントが狭くなったときは以下の症状、兆候が出現します。

  1. シャント音が弱い、すきま風のような高い音がする、音が短い 
  2. スリル(ザーザーした感じ)が弱い
  3. 透析時の静脈圧(戻すときの圧)が高くなる
  4. .枝がたくさん出てくる
  5. シャント側の腕が腫れる

シャント閉塞

シャントが閉塞した際には、以下の症状、兆候が出現します。

  1. シャント音がしない
  2. スリル(ザーザーした感じ)が触れない
  3. シャント吻合部周囲のみ拍動を触知する
  4. シャント血管が硬い、赤い、痛い

これらの症状があった場合には、早めにご相談ください。

シャント狭窄の場合の治療法

  1. PTA(風船で狭いところを拡げる)
  2. シャント再建(狭いところのすぐ上でシャントを作り直す)

シャント狭窄解除

シャント閉塞の場合の治療法

1. 血栓溶解療法+ PTA

血栓溶解剤を閉塞部位に注入し血管をマッサージ
血流が再開したらPTAを行う

2. 血栓除去術+PTA

血栓除去用の風船で血栓を掻き出す
血流が再開したらPTAを行う

3. シャント再建

閉塞したところのすぐ上でシャントを作り直す。

シャント感染

シャントが感染しているときには、痛みと発赤と腫れがあります。
場合によっては膿が出ることがあります。
原因は同じ部位を頻回に穿刺したり、シャントを不潔にすると起こります。このような場合、シャントを早く閉じないと大出血や全身感染に移行することもあります。人工血管の場合には一部あるいは全部取り出さなければなりません。血管に赤みや痛みがあるときには早めにご相談ください。

シャント瘤

シャントの瘤は、狭いところがあるとその手前にできます。
また同じ部位を穿刺し続けると起こります。感染によって発症することもあります。

シャント瘤

シャント瘤の症状

  1. バイ菌が付いているとき
  2. テカテカと光沢が出てきたとき
  3. 骨のように硬くなってきたとき
  4. 短期間に大きくなってきたとき (4cm以上)
  5. 美容的に気になったり、衣服に擦れるとき

シャント瘤の場合の治療法

治療法は瘤を切除して、すぐ上にシャントを作り直します。
外来でもできますが一泊の入院をしていただくこともあります。

静脈高血圧

静脈高血圧はシャントの上流血管に狭いところがある方に起こります。シャントは動脈に静脈を結びつけるため様々なところに狭いところができます。狭いところがあると血液はその部位で逆流したり、うっ帯するため腕が腫れます。心臓に近いところで狭くなると肩や顔まで腫れる事があります。治療はPTAを行うか、シャントを閉じなければならないこともあります。

スチール症候群

スチール症候群とは本来指先にいくはずの栄養や酸素がシャントに多量に流れるため指先が痛くなったり、冷たくなったり、紫色になったりします。治療法はなかなか難しくシャントを閉じなければなりません。


さまざまなバスキュラーアクセスのトラブルがありますが、上記の事柄につき注意するだけでもかなり予防や軽度ですむことができます。『いつもと違う…』と思ったらすぐにご相談ください。24時間対応しております。

シャントトラブルと思ったら
電話:0558-23-3113 (24時間対応)